月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
シャワーは上にセットされたままで勢いよく出ていて、飛沫が顔にかかる。それがお湯じゃなくて水だって気付いたのは、バスダブにもたれてる光を覗きこんだ時だった。
「ひ、ひかる!!」
上からのシャワーを浴びて、光は意識を失っているらしく、目を閉じている。
意識を失っている理由は、腕にある。
「ちょっと、光!?」
どこから持ってきたのか、ガードの無いカミソリが腕に突き刺さっていた。
空のバスダブにはシャワーからの水と一緒に、細く血液。栓が抜かれた排水口に吸い込まれている。
腕には、縦に切った傷。その傷の最後にカミソリが入ったまま。
「光! ちょっと光!!」
呼びかけても返事がない。
顔色は青く、水を浴びてるから冷たいのか傷のせいなのか分からなかった。腕の内側を、手首から肘まで切った傷。手首から、肘まで縦に。きれいな肌なのに。
なんで、こんな切り方したの……?
揺すっても頬を叩いても目を開けない。シャワーを止め、光を抱えてバスルームから引きずり出した。あたしより体格も良いから、引っ張っても少ししか進まない。
なんなの、なにやってんの光。バカじゃないの!
光を脱衣所マットの上に寝かせた時、腕からカミソリが外れた。まだ血が出ている。どのくらい出たのか分からない。傷が怖くて見られない。
あたしはずぶ濡れでリビングに戻った。ケータイを取ってお母さんへかけた。時間的にはコンサートが始まるって言っていた時間に差し掛かっている。
「電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないため……」
ああやっぱりダメだ。どうしよう、お父さんのもかけてみたけど同じだった。なんでこんな時まで仲良く電源切ってんのよ!
「ひ、ひかる!!」
上からのシャワーを浴びて、光は意識を失っているらしく、目を閉じている。
意識を失っている理由は、腕にある。
「ちょっと、光!?」
どこから持ってきたのか、ガードの無いカミソリが腕に突き刺さっていた。
空のバスダブにはシャワーからの水と一緒に、細く血液。栓が抜かれた排水口に吸い込まれている。
腕には、縦に切った傷。その傷の最後にカミソリが入ったまま。
「光! ちょっと光!!」
呼びかけても返事がない。
顔色は青く、水を浴びてるから冷たいのか傷のせいなのか分からなかった。腕の内側を、手首から肘まで切った傷。手首から、肘まで縦に。きれいな肌なのに。
なんで、こんな切り方したの……?
揺すっても頬を叩いても目を開けない。シャワーを止め、光を抱えてバスルームから引きずり出した。あたしより体格も良いから、引っ張っても少ししか進まない。
なんなの、なにやってんの光。バカじゃないの!
光を脱衣所マットの上に寝かせた時、腕からカミソリが外れた。まだ血が出ている。どのくらい出たのか分からない。傷が怖くて見られない。
あたしはずぶ濡れでリビングに戻った。ケータイを取ってお母さんへかけた。時間的にはコンサートが始まるって言っていた時間に差し掛かっている。
「電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないため……」
ああやっぱりダメだ。どうしよう、お父さんのもかけてみたけど同じだった。なんでこんな時まで仲良く電源切ってんのよ!