月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 頬杖のまま、小首を傾げる。魔性の美少年だな、こいつ。

「冬海くんだって、キレイな顔してる。言われるでしょ」

「うん」

 こ、こいつ!

「でも、別にキレイじゃないよ。男でキレイって」

「なんで? キレイ、だと思う」
 
 そう言った瞬間。
 冬海の目は一瞬にして曇って、少し机の上を彷徨って。その虚ろな眼差しにさえも、あたしの心臓は高鳴った。

「俺、キレイじゃないよ」

 形の良い唇から、言葉が低く出てきた。ますます深くなった夕陽の光が、長い睫毛に当たっている。

 どうしたの。なんでそんな顔するの。

 そんな魅力をあたしに見せつけないで。どうしよう、どうしたらいいのか分からなくなる。

 何か、言ってはいけないことを言ってしまったみたいで、気まずい空気が流れる。なんて、声かけよう。

 外は、ここに来た時から比べて、だいぶ暗くなって来ていた。カラスの鳴き声が聞こえる。空気の読めないカラス。

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