月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「……図書室来たら、センパイ寝てんだもん」
 
 先に口を開いたのは冬海のほう。ピンと張りつめた空気が、ふわっと緩んだような気配。

「日差しがあったかくて、つい」

「ずっとココ、居たんだけど。ずっと寝てんのね」

 冬海は人差し指で机をトントン、とする。

「ずっと?」

「うん、1時間くらい」

 え、そんなに? ちょっと待って……いま、1時間って言った?

「ちょ、いま何時?!」

 あたしは、急に立ち上がった。椅子が音を立てた。

「……っくりしたぁ。6時ちょい前だよ」

「……あぁ、寝過ごしちゃった」

「生徒会の人なのに、寝過ごしちゃったって。しかもここ学校」

「いいの、もう」

「なんか用事、あったの?」

 梓たちにメールしよう。ごめんって。きっとあの2人、あたしを待ってるに違いない。そういう人達だ。

 そう思って、携帯を取り出す。


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