月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「行った? 俺の」

「うん、来た」

 さ、し、す、せ……そのざわ。あった。

 窓の外、もう暗くなってきている。帰ろう。マックも行かないし、なんかもうマックとかどうでもいいみたいな。

 正直、目の前の冬海に全て持って行かれた。

「あれ、もう暗いね。センパイ帰んないの?」

「あ、うん。そろそろ……冬海くんも帰るでしょ」

「あー帰るっていうか、バイトっていうか」

「バイトしてるんだ。何の?」

 あたしは鞄に古文の教科書を入れ、帰りの準備をしながら喋る。

「センパイ、ちょっと、じっとして」

 急に言われ、あたしは動きを止める。

 すると、冬海はあたしへ手を伸ばしてきた。

 再びあたしの心臓は2倍速になる。ちょっとマジでカンベンしてよ。

「髪。消しゴムカス」

 何の香り? いい匂いがする。冬海の指があたしの髪の毛に触れる。

「と、とと取れた?」

「はいよ。取れました」


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