月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「あたし今日、ちょっと」

「サボりだな」

 あっさり当てられる。

「さぼ……! 友哉だって何やってんの。しかも制服で」

「サボり」

 結局は2人でサボりか。友哉こそ、こんないかがわしい場所の一角で、何をしていたんだろうか。

「元気だったか? 髪伸びたな」

 友哉は、そう聞いてきた。あたしの方を見ていないけど。雨は少し止んできたみたい。友哉の髪も少し濡れている。

「うん元気。友哉も身長伸びたね」

 久しぶりに、ともや、って口にした。

 ドキドキしている。見上げる角度も変わってない。

 友哉は鞄を持って、なんだか落ち着き無い様子だった。誰かと待ち合わせなんだろうか。


「ここ、通ったら近道っていうか、そしたらお前が居るから。私服で最初分かんなかったけど」

 そうだった。あたし今、制服じゃないんだった。カーディガンの裾をちょっとつまんだ。


「あぶねーし、こんな場所にひとりで」

「実は、迷っちゃって……」

「なんだそれ」

 てへぺろ、ってこういう時に使って良いんだろうか。 

「駅?」

「うん」


 あっち行ったら曲がってこう行って……って道を教えてくれた。

 駅まで歩けば30分くらいはかかるらしい。けっこう遠くまで来ちゃったんだな。


「俺、待ち合わせあるし。ひとりで帰れるか?」

「大丈夫。ごめんね」


 少し大きな通りまでは友哉も行くというので、そこまで一緒に行ってくれることになった。


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