月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 背中にカーペットの感触。

 上から冬海に真っ直ぐ見つめられて、あたしは動けない。

 そういうつもりでアパートに来たわけじゃなかったのに。でも。


「頭くる。抱きしめるなんて。そういう困った顔、あいつも見たんだ」



 でも、分かってた。

 気を引きたくて中尾先輩のことを喋った。

 隠してるから、あなたが。

 きれいな顔をして、何を考えてるのか分からない。何をしているのか分からない。不安でいっぱいで、疑って。



「……!」

 ふいに、冬海の手がスカートの中に入ってきた。下着に手がかかる。

「やめて……!」

「なんで、俺たちつき合ってるんだし。別に」



 下着を太ももまで下されて、足をばたつかせた。

 やだ、こんな風にされるなんて。

 冬海は片手で自分の青いネクタイをゆるめて外そうとしている。


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