月光レプリカ -不完全な、ふたつの-


 聞きたくなかった言葉の羅列に、気が遠くなりそうだった。

 冬海が、売りをしている……。少しでも可能性があるなら、嘘であって欲しかった。

 マミ先輩と中尾先輩の言うことも、ホテルに入っていく冬海の姿も。

 嘘であって欲しかった。




「……うそ……」

「嘘じゃないよ。ばあちゃんとの暮らしは見ての通り苦しいから」


 これで、逃げ場は無くなる。気持ちが袋小路に入ってしまう。

 衝撃は半端なものではなくて、体が震えて呼吸が止まりそう。

 生活の為なの……?


「何時間か我慢して言うこと聞けばさ、お金貰えるんだ。それ稼ぎになって。車の女の人って、事務所の社長」

「……」


 やっぱり。電話の相手の正体。

 電話がかかってきて、一緒に帰れなかったのは、その社長からだったから。かけてきてたのは、あの女の人で、社長で、仕事の連絡。

 売春斡旋。そんな言葉が頭に浮かんだ。



「大人とセックスして、金を稼いでんだ。これが俺のバイト」



 笑顔が消えて、無表情で冷たくそう言う。


 これは、あの冬海なんだろうか。一瞬そう思ってしまう。


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