月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
言ってから、彼を傷つけてしまったことに気付く。
冬海の目がみるみる赤くなっていったから。
でも、嫌だよ、もう。
少年を買うような大人に、そんな気持ち悪い大人に、冬海が好きにされているなんて。気持ち悪い、気持ち悪い!
ピリリリ、ピリリリ。ピリリリ、ピリリリ。
その時、後ろに放り投げてあった冬海のケータイが着信した。
ピリリリ、ピリリリ。ピリリリ、ピリリリ。冬海はケータイに手を伸ばす。そして、電話に出た。
「はい……はい、分かりました」
短い返事の後、電話を切る。
「仕事入ったから、ごめん」
「冬海!」
「帰って。送れないけど、駅近いから分かるでしょ」
冬海は立ち上がると、あたしの鞄を渡してきた。ゆるめていたネクタイを乱暴に外すと、あたしを見る。
なんて冷たい目……。早く出ていけとでも言うように。テーブルには食べなかったお菓子と、あたしがずっと握っていた豆乳。
「着替えてバイト行くから。帰って」
「冬海……なんで、やだ!」
「帰れよ!!」