月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 買い物の帰り道、なんとなく学校最寄の駅で降りてみた。駅前のDVDやCDのレンタルショップに寄って、本を見ていこう。

 何か買うものがあったわけでは無いんだけど、気分転換にファッション雑誌とか。

 いいかもしれない。今日買い物に行ってきたのに、タイミングがおかしいけど。別にいいんだ。今日使っちゃったから、お小遣いもあんまり残ってないけど……。


 ここで、冬海を見つけて尾行したんだっけな。

 自動ドアが開き、店内に入る。外の暑さから、ひんやり冷たい空気に包まれる。

 店に入るとあの時の緊張が少し蘇る。

 DVDレンタルのコーナーから、こうブックコーナーを見だら、冬海が居たんだ。



「……」


 ……って、なんで冬海が居るの? あれ冬海じゃん。

 1人で、神妙な顔つきで、制服姿で。なんで居るの!? 制服で、なんなの一体! この偶然、怖い。


 尾行しようと思っていたわけじゃないし、両手に荷物があるし、なんだかワタワタと慌ててしまって、本棚にショップの紙袋がぶつかり雑誌を落としてしまった。

 バサバサッと音がした。ああもうバカ! 何やってんの冬海に見つかる!



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