月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「……なに、してんの?」

 雑誌を拾うためにしゃがんでいるところへ、声が降ってきた。冬海の声だった。

 バカバカ! 見つかった……。


「あ、ああ……コンニチワ」

「買い物?」


 3個の紙袋を指さして、冬海が言った。

 制服姿で、髪の毛を切ったばかりなのか、短くなっていて涼しげ。夏休み前にちらっと学校で見たのが最後だったから。

 整った顔はそのままで、特に変わったところもなく。でもなんとなく、夏休み前の冬海と違うんじゃないかっていう気持ちもあった。


「せ、制服なんだね」

「補習あったから」

「ああ、そっか」

「パンツ見えてる」

「え!」


 ミニ丈ワンピースだったのに、思いっきりしゃがんでる為に、正面から白いパンツが丸見えだった。なんのサービスだ。


 急いで立ち上がると、紙袋をガサガサと持って裾を直した。

 わきの下に汗がじっとりと出てくる。やめてよ! 止まれ!



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