月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 何も言わずに2人で本棚の脇に突っ立ってる。

 なんだか居心地が悪いというか、何を話したらいいのか分からなくて、もじもじとしてしまった。冬海もなんだかそんな感じだ。


「冷たいもん、飲まね? 外の自販機で」

 そう言ったのは冬海。

 あたしは、無言で首を縦に振り、店を出る冬海の後を付いていく。自動ドアが開くと、むわっとする熱気が襲ってきた。


「あっつー」

 冬海は眩しそうに見上げる。夏服の白いシャツの背中と、その横顔がなんだか大人びていて胸が苦しくなった。

「センパイはどれ飲む?」

「あ、じゃあコーラ」

 冬海はコーラを買ってくれ、あたしがお金を渡そうとすると「いいよ」と言って受け取ってくれなかった。複雑な気持ちだったけど……。

 自販機の横で2人。

 冬海はポカリのペットボトルのキャップを取り、ゴクゴクと飲む。あたしもキャップに手をかけると、プシュッという気持ちの良い音がした。

「あーうめー!」

 冬海は半分ほどを一気に飲んでしまっていた。

 あたしも喉が渇いていたし、グイグイ飲みたい気分なんだけど、うっかり炭酸だった。あたしもポカリにすれば良かった。

「暑いわーまぁ夏っぽくて良いけど」

「そうだねー」

 ジリジリと照りつける太陽。眩しい光。焼けたくないから日焼け止めを塗って。

 行き交う人々の中には日傘の女性もたくさん居た。



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