月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「……元気?」

 あたしはなんとなく、そんなことを聞いた。学校ではすれ違うだけだった夏休み前。

 あの冬海の告白があってから、2人で会うなんてしなくなって。今日この時がアパートに行って以来だったから。

「うんまぁ。センパイは夏バテしてそう」

「いや、してないけど。普通」

「あっそ」

 つれない返事。

「体が心配だっていうか……ちゃんとご飯食べてるのかなぁって……思ったから」

 ああ、あたし何言ってんだろ。近所のおばちゃんか。でも、本当にそう思ってたから。

 おばあちゃん居るから大丈夫だろうけど。


「バイトのこと、言ってんの?」

 眩しそうな目であたしを見た。その言葉と表情にドキリとする。ときめきとかそういうんじゃなくて。

「心配しなくても、もうセンパイは俺がどうなっても関係無いから」

「……か、関係無いって……」

 何でそんなこと言うの? もうあたし達、終わってるって言いたいの?

「……そんな、こと」

「俺も、センパイと会うと……ちょっと」

 相変わらずすらりと伸びた指。その指でペットボトルを弄ぶ。中の液体が太陽の光でキラキラしていた。

 会いたくない、って言ってるの……?


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