月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 背の高い体に黒いTシャツにデニム。冬海にちらりと視線をやって、口の端っこを少し上げた。

「夏休み前に会った以来だなー」

「う、うん」

 そうだった。ホテルの前で助けてもらったのは冬海を尾行して……。

「カレシ?」

 冬海に親指を向ける。余計なことを言わないで立ち去って欲しかった。嫌な予感がして、足が震える。

「……だれ?」

 冬海もあたしに聞いてくる。もうむしろ2人とも黙って、そして解散しよう。できればそうしたい。

「あの……この人、あたしの中学の時の……」

「アキラの元カレでーす」

 ……チャラい。やめて本当に。

 友哉ってこんなに無神経な人だった? あとあたしもなんで説明してんの。

「アキラの今のカレシ? 美少年だねー」

 へーって言いながらジロジロ見てくる。この前みたいにペットボトルを今度はあたしが投げつけたい。助けてもらったのは感謝してるけど。

「ていうか、俺コイツのこと知ってるし」

「コイツ?」


 友哉の言葉に、冬海がカチンと来たようだった。友哉のほうが背が頭半分くらい高いので、見下ろされている。


 それより、友哉。なんて? 知ってるって言った。冬海のことを知ってるの?



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