月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
あたしは冬海と友哉の間に入って立ちはだかった。
殴るならあたしを殴ればいい。
「冬海に手を出さないで!」
暑い。照りつける太陽はあたし達を焦げ付かせようとしている。
そのあたしの行動を見て、友哉が拳を緩めた。すると、後ろから冬海に肩を掴まれる。あたしの手は冬海の腕を掴んだままだった。
「離せよ……」
「冬海?」
「離せよ! 何なんだよあんたら2人とも……」
苦痛に顔を歪め、そしてあたしを睨む冬海。なんて、冷たい目なの。
「もう俺にかまうなよ!」
あたしの手を思いっきり振りほどく。
小さく舌打ちをして、脇腹を押さえたまま、ヨロヨロとあたしと友哉から離れて行く。
「冬海!」
「ほっとけよアキラ!」
ギラギラとした光に打たれながら、冬海の背中が遠ざかって行く。
「冬海……」
呼んでも振り向いてくれる気配は無かった。
建物の角を曲がり、姿が見えなくなる。友哉の舌打ちが聞こえてきた。