月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「なんだアイツ。頭イカレてんじゃねえの? 売春ヤロー」

「……やめてよ」

「アキラ、知らなかったんだろ? 騙されてたんだろうがよ」


 聞きたくない。友哉はポケットに手を突っ込み、煙草とライターを取り出した。あたしの、嫌いだった煙草……。


「客とセックスして金貰って、その体でお前に触ってんだろ? そんなの」

「やめて!」

「お前こそ目ぇ覚ませよ!」


 友哉が怒鳴った。まわりに声が響いて、レンタルショップを出入りする人達があたし達の方を見る。


「……友哉だって、何してんのよ……マミ先輩と。なんなの?」

「あっちが誘って来たんだし……別にマジなわけじゃ」


 冬海は行ってしまうし。友哉は言い訳をしている。

 暑い。

 もうなんなんだ。なんでこうなったのよ。友哉の言い訳も耳障りでしかない。


「マジじゃなかったら良いわけ? 本気じゃないから、あの時だって……」

 飲んでいたペットボトルはいつの間にか足元に転がっていた。いつ手を離したんだろう。覚えていない。

 もうきっと温くなってしまっただろう。その先に、友哉の靴の先。


「中学の時だってそうじゃない! どれが友哉の本気か分かんないよ!」


 靴から顔を上げて、友哉の顔を見た。少し、言葉に詰まったようだった。


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