月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

 暑い空気は止まらずに、あたし達を取り囲んで、血がのぼった脳みそを溶かしそう。

 中学の時の友哉。目の前に居る友哉。

 友哉が見ているのは、いつの晃なの? あたしの心は、過去と今をもの凄いスピードで行き交う。


「……アキラ、お前」

 先の方だけ吸って、煙草は地面に投げられる。友哉の靴がそれをザリザリという音をたてて消した。

 煙と臭いが漂っていた。



「やり直さないか……」

 一瞬、まわりの声が聞こえなくなった。
 友哉の声は、あたしに向けてかけられているのに、太陽の光は熱いのに、心が冷えていく。やり直す……?


「俺、お前とやり直したい」

「な……」

 何を言っているの。友哉、なんで?

「やり直すって、何言ってるの? できるわけない」

「お前の話をマミから聞いたからじゃねぇ。最初から、あの時からずっと俺は……」

 あたしの全てだった。
 中学の頃、友哉が全てだった。心も体も全て、友哉の為にあったのに。

「お前しか、好きじゃなかった……」

 地面の吸い殻はバラバラになっていて、火も無い。煙草の臭いは風に消されて、空気はただ熱いばかり。


 頭に甦る。「お前が浮気なんだよ」という声。


 友哉をまとうのは、あたしでありたかった。

 でも。


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