月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「別れる、とかじゃないんでしょ?」

 机に頬杖をしていた美由樹が顔を上げる。

「まだ……分かんない。ごめん」

「そう……」

 心配そうな2人の顔。あたしは、2人に何も話せない。こんな辛いことって無い。

 冬海が好き。それだけでなんで前に進めないの? 

 子供でもないし、だからって大人でもない。できないことが多すぎる。



「わ、分かんないの。ごめん」

 気付けばあたしの目からは生温い涙がこぼれていて、美由樹がティッシュをくれた。

 溢れる涙は抑えることができなくて、あとからあとから。「大丈夫?」と言ってくれる梓は頭を撫でてくれる。2人の前で泣いたことなんか無かった。

 静かな教室に、自分の嗚咽だけが響く。鼻水も止まらない。



「あれだね、冬海は今度会ったら蹴り入れてくる」

「えー顔はダメだよ」

 梓と美由樹はそんなことを言っている。そんな会話に少しだけ心が和んだ。ふふっと、笑ってしまった。


「ちゃんとご飯食べなよー! アキ」

「うん」


 梓に頭をバシッとやられた。痛くは無かったけど。

 2人に救われる。あたしは冬海のこんな風な存在に、なりたい。壊れないように、もっともっと抱きしめたい。

 苦しくて胸は爆発しそうだけど、涙は止まらないけど、この手はまだ、冬海を求めるんだ。

 前よりもずっと。



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