月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 もうちょっと落ち着いてから帰るからと、先に2人を帰らせて、あたしはまだ教室に居る。でも薄暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか。


 そう思っても足が重く、このままずっと居てしまいそうだったから、気合を入れて椅子から立った。その時、「幸田!」という大声と教室のドアがバン! と開く音が聞こえた。


「ぎゃあ!」

「なんだお前、こんな時間にぼっちか教室に。怖いぞ」

 あんたの方が怖いわ! そう叫びそうになったけど我慢する。

 その声はそう、吉永先生。なんだよもう……大声出すなよ。

「なにやってんだこんな時間まで。俺はもう帰るぞ」

「どうぞ……」

 子供か。愛おしい彼女が待つご自宅へ帰ったらいいじゃないですか……。

「あ、じゃあ今日行くか。どうだ、幸田これから暇か?」

「え?」

 なんだ唐突に。意図が全く見えないんですけど。帰りがけ一杯やるか? みたいなノリですけどあたし未成年ですけど!

「園沢の家に行こうと思ってたんだよ。ちょっと遅くなったけど、お前も居ることだし、今日行こうと思ってな」

「い、今から?」

「今から」

 冬海の家……? なんで今、なんでこんな時に。あたしと? あたしも行くの?
 なんだかわけが分からない状態で、鞄は机に広げたまま。

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