月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「買いかぶりですよ、中尾先輩。あたしそんな真面目じゃないです」

 不器用に笑って、あたしは答えた。テンションは低い。まぁいつもだけど。

「でも、本当は熱い人だって、俺は思うんだけど、違う?」

 キラリとメガネに陽の光が反射した。

 気付けば、生徒会室にはあたしと中尾先輩の2人しか残っていなかった。

「さあ……わかりません」

「そ、まぁいいけど」

 中尾先輩は、頭が良くて優しくて、男女両方に人気がある。なるべくして生徒会長になったって感じの人だ。居るよねこういう人種。
 でも、嫌みの無い人だ。

「先輩、進学決めてるんですか?」

 なんか、会話が途切れてしまったので気まずくて、あたしはくだらないことを聞いた。

「うーん、まぁ決めてるよ、進学。もうこれからは受験勉強に勤しみます」

「先輩だったら、一発合格ですよ。勉強できるし」

 ペンを筆入れにしまいながら「油断禁物、でしょ」と中尾先輩は言った。

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