月光レプリカ -不完全な、ふたつの-

「あ、幸田お前は送っていくから家に帰れ」

「え、やだ!」

 急にそんなことを言われて、反射的にそう言ってしまった。

「やだじゃないだろ。親御さん心配するし」

「いいんです。友達のところに泊まるとか言うし」

「だって幸田」

「いやだ、帰りませんからあたし!」

 帰るもんか!

 強い意志で言ってますアピールをした。こんな傷だらけの冬海を置いて帰れるわけが無い。帰らないから。

「しょうがねぇヤツだなぁ。連絡は入れておけよ家に」

 言われるまでもなくあたしはその間に、お母さんに「今日は勉強するから梓のところに泊まるね」とメールをした。

 心配するだろうけど、今までも試験前とかに泊まり勉強をしたことがあったから。

 今日はどうなるか分からないけど、明日は学校が休みだし。

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