月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 生徒会室は校舎の3階にある。学校は少し小高い場所にあるので、窓からは町並みを見下ろせる。

 キラキラ光って見える。いい眺めだ。今日は帰ってから、先週借りた本を読んでしまおう。

 図書室で寝てしまって、冬海に会った日。次の日も少しだけ期待して図書室に行った。
 暗くなるまで待ってみたけれど、冬海は来なくて、あたしはたいして興味の無い薄い本を適当に借りて帰った。

 さ、帰ろうかな。

「こ、幸田さんさ」

「はい?」

 鞄を手に持った時だった。中尾先輩が声を発したのは。

「あのさ、好きなヤツとか、いんの?」

 一瞬、何を聞かれたのか分からなかった。少しの間があって、あたしは反応した。

「え、いえ。別に……」

「そ、そうか……いや、ごめん。なんでもない」

 なんだろう、好きなって、好きな男ってこと? 恋愛のこと聞いてるの?
 そりゃそうだよね。こんな質問されて、小学生の女の子でも分かる。

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