月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「吉永って先生だったな。せんせいコワイ!」

「前見て運転してくださいタケさん」

 吉永先生とタケさんのやり取りを聞きながら、これからどうなるんだっていう不安の方が大きくて、安心はできなかった。


「大丈夫か、園沢」

 吉永先生が声をかけてくる。

「冬海……」

 小さく呼んでみる。聞こえてるかな。目を閉じているのは寝てるから?

「……ん、大丈夫」

 冬海は窓側で、あたしは彼の左側に居る。左の手は、冬海が自分で掴んで隠している。痛いだろうに、すごく腫れてたし折れてるんだから。

「もうすぐ着くから。動けるか?」

 隣で冬海が小さく頷く。立つのもしんどそうなのに。

 あたし達が乗った車は、スピードを落とすと茶色い大きなマンションの前に停車した。病院の看板が出ていた。ここだろうか。

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