月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「大丈夫だよ。あの先生、腕が良いんだから。ハゲてっけど」

 ハゲ?

「ハゲじゃねぇ。坊主だ」

 後ろから声が聞こえた。さっきの白衣の人。やっぱりここの先生なんだ。ハゲじゃないね、坊主だよね。

「タケ、変なこと教えてんなよな」

「あースミマセン」

 口を尖らすタケさん。坊主先生の後ろから、吉永先生も歩いてきた。冬海は居ない。

「お、終わったんですか検査……!」

「まだだけど、安定剤で眠ってる。レントゲン取って、骨折は指だけだ。頭も打ってない。1週間は入院ね。全身打撲と骨折。全治4週間てとこだな」

 入院……。ここの病院は入院施設もあるらしい。

「打撲と骨折はまぁ治るから良いとしてもだな……」

 坊主先生は、顎に手を当てて言いよどむ。なんだろう、何かあるんだろうか。

「何か問題でも……? 先生」

 吉永先生も同じことを思ったらしい。その声が薄暗い待合スペースに響く。非常口の緑のマークが視界に入った。

「この子は、その……?」

 坊主先生は制服姿のあたしを見て、他の大人に回答を求める。

「ああ、彼……園沢くんに一番近い人だから」

 そう言ったのは吉永先生だった。

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