月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 病室のドアを開けると、ベッドが4床あるようで、1つだけにカーテンがかかっていて、あとは誰も居なかった。そこに冬海が居るようだ。

 案内してくれた看護師さんが(坊主先生の他に人が居たことにびっくりしたけど)「眠っているのでお静かに」と言っていった。

 他に入院患者が居ないのか、それとも開いていたこの部屋に冬海を入れたのかは分からなかったけど。

「お、全員ベッドで寝られるんじゃね?」

 タケさんが小声で言った。

「バカ。俺達は付き添いしないぞ。外に居るから、幸田あと任せた」

「え、先生達は?」

「大人の心配はしなくて大丈夫だ」

 任せるったって……。

「空いてるベッドで寝てりゃいいさ。何かあったら呼びなさい。ケータイ分かるだろ?」

「はい……」

 背の高い2人の前で、なんだか自分が余計に小さくなったように感じてしまった。
 吉永先生とタケさんは車に行くらしい。

「なんか純愛だなーいいなー。俺も恋人欲しい」

 タケさんが長い腕をひらひらさせてそう言った。

「タケいっぱい居んじゃないか。男も女も」

「本命は居ない」

 なんだ……なんの会話だ。


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