月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 中尾先輩は鞄を持って、少し俯き教室の出口へ向かいながら「帰ろう」と言った。

 あたしも、後に付いて教室を出た。

 生徒会室に居たのは1時間くらいだったか。まだ部活動の声が校庭から聞こえてくる。

 校庭にをぐるっと囲むように立つのは桜の木。新学期の頃にはしぶとく咲いていた花も全て散って、今は新緑の時期だ。

 あの花壇も、いろんな花が咲いている。ゆらゆらと風に吹かれて笑っているように。


「ごめん、変なこと聞いて。あんま気にしないで」

「あ……いえ」

 中尾先輩が苦笑いしながら改めて言うから、あたしも苦笑いになった。

「あたし、寄るところあるんで」

「あ、うん。じゃプリントお願い。バイバイ」

「さようなら」


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