月光レプリカ -不完全な、ふたつの-




 頭に温かい感触があって、それで目が覚めた。

 うう。突っ伏して寝てしまったらしい。首が痛い。

「うう……」

「すごいうなり声」


 顔を上げると、まぶたを半分だけ開けて、冬海があたしを見ていた。頭の手は冬海の右手だった。

「お、起きたの? 痛みはどう? 人呼んでくる」

 口の端によだれがあって、それをぬぐった。恥ずかしい。

「いいよあとで。大丈夫だ」

 ふう、と息を吐く冬海。もう朝になっていたのか。病室に明るい光が入ってきて、暖かかった。


「ずっと居たの?」

 あたしの頭から手を離して、冬海が言う。目を閉じていた。痛むんだろうか。

「うん。先生達は外に居るって」

 ずっと車に居るのかなぁ。電話しなくちゃ。制服のポケットからケータイを取り出す。


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