月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「俺のばーちゃん、今一緒に居ないんだ」

「あ……うんそうだった。昨日もアパートに居ないなっては思ってたけど」

 そこで会話が途切れる。冬海が何を言いたいのか、よく分からなかった。病室には誰も入ってこない。ナースコールをしないと見に来ないのかもしれない。

「……俺の親、居ないって言ったじゃん? 2人とも死んで居ないんだけど」

「……うん」

 なんだか、思い空気。冬海の話の脈絡が掴めない。何の話だろう。

「母さんは俺を産んで、死んだんだ。体が弱くて……」

 そうだったのか。小さすぎて覚えてないって言っていたけど、自分が赤ちゃんの時に母親が。

「父さんはショックで酒浸りになって、体壊してすぐ死んだ。母さんを追いかけるみたいにってばーちゃんが言ってた。まぁ俺は父さんと母さんのこと全然覚えてないんだけど」

「……」

「ばーちゃんが……俺を育ててくれたんだ。ここまで」

 初めて聞く話だった。
 ご両親亡くなってることくらいしか知らない。あたしの家には一度来てるし、妹がいることや、実は兄がいることも話したけど。

 こういうお母さんだとか、お父さんはこうだとか。聞きたいって言うから……。

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