月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「他に……親戚とかは? 秋田に居るの?」

「居ないよたぶん。居ても知らないし」

「……そう」

 全く居ないのかは分からないけど、付き合いが無いのかもしれない。


「……ばーちゃん、入院してんだ」

「え?」

「ガンなんだって」

 ……え? 

「生活費もだけど入院費の足しにしたくて、俺は……」

 冬海が体を売る理由。全部おばあちゃんの為。自分を育ててくれた、おばあちゃんの為。自分の体を使って稼いでいた。

 冬海は、掛布団から手を出して、胸の上に置いた。骨折をしている手。

「俺なんか……産まれないほうが良かったよ。母さんも死ななくて済んだし、俺を育てるのに、ばーちゃんまで大変な思いして、あげくにガンになるなんて」

 唇を噛んでそう言う冬海は、声がかすれている。

「産まれないほうが、みんな幸せだった」

「……そんな」

 悲しいことを言わないで欲しかった。でも、かける言葉が見つからない。冬海は、ふうっとひとつため息をつく。


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