月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「センパイ……」

「うん?」

 冬海の左手は、真っ白な包帯がぐるぐると巻かれていた。何度も繋いだ手だった。

「もう、終りにしよう」

 包帯の色は、とても白い。


「別れようセンパイ」


 包帯から目を離して、冬海を見る。真っ直ぐあたしを見ている。
 
「……なに、言って……」

「ごめん」

 別れようって、言ったの? 別れるの?

「やだ……」

「ごめん、センパイ。好きになっちゃいけなかったんだ」

「冬海!」

 なんで、そんな。どうして。

 冬海。

 赤いような、潤んでるような、そんな目であたしを見ていた。

 涙で濡れてるのは、あたしの目の方か。



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