月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 走って職員室へ向かう。

 すれ違う生徒が全部1年生で、全員が冬海のことを知っているような錯覚があった。たまらない気持ちになる。

 職員室のドアをノックし「失礼します」と開けた。数人の先生が居て、こっちを向く。先生方に注目されるのは気持ちの良いもんじゃなかった。

「幸田! こっち」

 奥の方に吉永先生が居て、手招きをしている。あたしはペコペコしながら入って行き、吉永先生のところまで行った。

「ちょっとこっち来い」

 職員室と校長室の間にある、書類置き場みたいなところに連れて行かれた。こんなところに入るの初めて。

 窓が1つあって、昼間はそこから光がはいるのだろう。4畳ほどのスペースで、段ボールやら本やらプリントやらが積まれてあった。

「あれから、園沢と連絡取ったのか?」

 腕組みをした吉永先生に上から見下ろされる。身長差があるからどうしたって見下ろされるんだけども。

「……いいえ」

 連絡なんて取ってない。退院の日取りも知らなかったし。別れようって言われて、連絡するわけない。

「そうか……実はな」

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