月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「俺、見たんだよ。新港の方の工事現場。園沢が居たよ」

「うそ」

「嘘じゃねーから。行ってみれば? バイトしてんじゃねーの?」

 バイトって……工事現場?

「友哉、見たの? 会ったの?」

「会ったっていうか、先輩の車で通りかかったら、なんか見たことある顔が居るなって思って。ヘルメットかぶってたけど、園沢だったよ」

「そう、なんだ……」

 引っ越すって聞いたし、どこか遠くにでも行ってるんだと思ったけど……。

 県内に、しかも割と近くに居た。

「別れたって聞いたけど、どうなの?」

 そういうことまで知ってるんだもんね。情報網は敵わない。どこから聞いたんだか。もうマミ先輩は友哉と会ってないって言ってたし。


「うん……まぁ」

 そうはっきり聞かれると辛い。あたしはパジャマの裾の毛玉を取り始めた。ちくしょう。

「行って来れば? 場所、教えるし」

「……」

「行って来いよ、園沢のところ」


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