月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 友哉がそんなことを言うなんて。少し驚いてしまう。

 あたしが知ってる友哉と違う。子供っぽくて強引で、自己中だった。でも好きだったけど。


「……友哉」

「まだ、好きなんだろ?」

「……」

 なんでそんなに優しく言うの。

「あたし……酷いこと言ったのに、友哉に。どうして?」

「俺も酷いヤツだし。おあいこ」

 鼻で笑う友哉が電話の向こうに居る。その笑い方は変わってないんだね。


「罪滅ぼしって言ったらおかしいけどな」

「友哉……」

「行って来いよ。な?」


 だめだ。泣いてしまいそうだ。ぐっと堪える。友哉が困ってしまうから。

「うん……わかった」


 鼻水をすすると「泣いてんのかぁ?」って陽気に聞いてきた。泣いてないよ、泣くもんか。

 友哉が教えてくれる場所をメモっていると、美由樹が部屋のドアを開けた。



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