月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「分かった。ありがとね」

 電話を切る。「ご飯出来てるよー」と美由樹が言った。中途半端になっていたカーテンを開ける。

「ちょっと、あたしもう帰るね。用事あって」

「えー! そうなの?」

 パジャマを脱ぎにかかった。持ってきた服に着替える。もうちょっと可愛い服を持って来れば良かったな……。

「もう行くの? ご飯はー?」

「ごめん。着替えたら行くね」

 髪の毛を整えて、タイツを履く。ニットのワンピースを着てダウンを羽織った。
 着替えとお泊りセットがあるから、荷物は多いけど、家に戻ってなんていられない。


「冬海んとこ、行ってくる」

 そう、ベッドに座る美由樹に言った。口をあんぐりして驚く彼女に、笑って見せた。

「そうなんだ! 居るところ分かったんだね」

「うん」

「早く早く! こうしちゃいらんないでしょ。あとは任せて、行ってきなよ」

 美由樹はまるで自分が行くみたいにテンションが上がっているようだ。
 荷物をまとめて、手に持った大きめのバッグ。それを持って玄関まで行く。

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