月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 紙カップの中身は、もう無くなっていて、その後に中身になった物はきっと冷たい風なんだと思う。



「……ばーちゃん、死んだんだ」

「え……!」

 少し強い風が吹いた。冷たい風だった。おばあちゃんが亡くなった……?

「先月だな。……センパイに会わせられなかったなー」

「……」

 会ったこともないおばあちゃん。冬海のおばあちゃん。

「言うこと聞かなかったりとか、反発したりとか。自分が産んだわけじゃないけど血が繋がった孫で、なんかそういうの不思議っつーかなんつーか」

 冬海は遠くを見ている。


「父さんと母さんが死んだのも、俺のせいだし。自分を恨んだし、どうなっても良いと思ってた。でも、ばーちゃん……楽させたくて」


 遠くに町並みが見えて、夕焼けが冬海の頬を照らす。


「……会わせられなかったなー……ばーちゃん、死んじまった」


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