月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「あたし、冬海のそばにずっと居る」


 今日の夕陽、昨日の夕陽。

 おばあちゃんが亡くなった時の夕陽。そして、これから見る夕陽。2人で一緒に。


「おばあちゃんの代わりにはなれないけど」

「……晃」


 冬海の顔、こんなだったっけ。

 瞳も、あたしの手も全部、夕陽に染まっていて、胸が痛いくらい。晃って呼んだ冬海の声も。


「泣くなよ」

「泣いてんの、冬海でしょ……」


 ビニールを握っていた手で、あたしの手を握ってくるから、カサって音がした。

 とても小さな、雪が降ってきた。春になろうとする季節に、細かい雪。


 夕陽の中で舞う雪は、まるで涙みたい。

 はぐれないように、手を握って。

 その手に雪が落ちて、冷たくても。


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