月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「晃に触っていいのか……」
本当は、言われたくないし聞きたくなかった。でも、過去は消せないから。だから。
「……あたし、何が良くて何が悪いのか分からない。消せないけど、でも」
あたしも冬海に触れる。少し骨っぽくなって、でも変わっていない頬に。
「消せるなら、あたしで消せばいい」
戻れないかもしれない。分からない。でも、離れたくは無い。離れていかないで欲しい。
「……あき、ら」
冬海の手に、首筋と頬を温められて、あたしの体は一気に沸騰するようで。
あたしで消して良いよ。
未熟で不完全で、不安定。だからこそ、あたし達は離れられないんだ。
結んだ苦痛は、いつか本物になるんだって、思いたい。
白い肌は、表面で月の光が踊っているみたい。あたしの手にも、白く。
「不完全、だよな。俺達……」
冬海が、あたしの手を握りながら言った。
でも、こうして手を繋いでいれば、不完全で不安定なあたし達も完全になれると、そう思う。