月光レプリカ -不完全な、ふたつの-




 カーテンから漏れる光に目が覚める。ええと、ここはどこだっけ? 

「……起きた?」

 隣から声がする。

 そうだった。ここは冬海がいま住むアパート。殺風景だけど、ここに居るんだ。

「起きてたの?」

「俺もいま起きたとこ。晃が口開けて寝てるの見てた」

「うわー変態」

「変態って言うな!」

 おでこを手で押さえられた。脱ぎ捨てられた服が視界に入る。持ってきた着替えとかが入っている鞄。食べたお菓子とペットボトル。



「晃、3年になるんだなー大人じゃん」

「そう? あんまり変わらないけど」

 なんか、現実に引き戻された感じ。ふんわりとした未来しか自分の中に無いけれど。

「大学行こうと思ってるから」

「応援すっから」

「うん」

 3年生になって、受験があって。これから色々あるだろう。春休みも終わるし。

「俺は……仕事がんばる」

< 369 / 394 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop