月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 カーテンからの光は、朝のものなのか昼のものなのか、分からない。この部屋にはまず時計が無いし、ケータイも鞄の中だった…ような気がする。

「なぁ、次の休みにでもさぁ」

 冬海は横を向いて、腕で頭を支えてあたしを見る。まつ毛に光が当たって、キラキラしていた。

「入道崎に連れて行きてーな」

「にゅうどうざき?」

 聞いたことが無い。

「秋田の観光地だよ。日本海がガーッて広がって、白黒の灯台があって、すげーキレイなんだ」

「へえ~」

「天気が良ければ最高。海も空も真っ青で、草原が緑で。行きてーな2人で」

 行ってみたい。冬海が生まれた秋田に行ってみたい。こっちは太平洋しか見られないし、日本海ってどういう感じなんだろう。


「行こうよ。あたし行ってみたい」

「よし、決定な」

 約束、だね。冬海が笑顔になったから、あたしも嬉しくなった。




< 371 / 394 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop