月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 休憩時間が10分しか無い。スナックコーナーで食べてる暇が無いのが残念。

「あと買う物ある?」

「俺は無いよ~」

 バス発車まであと3分くらい。車内に戻って、すぐ発車になった。ゆっくり見学できなかったな、サービスエリア。お土産とか見たかったけど。

「おにぎり食べていい? 俺もう腹ぺこで限界」

「あたしサンドイッチにしようかなー」

 他の乗客も、おにぎりやお弁当を食べている。こうやって、移動中に美味しいものを食べたり、ご当地のお弁当を食べたり、お土産を見たりするのが楽しいんだろうな。旅の醍醐味? なんか大人だなあたし達。

「秋田駅に着いたら、電車乗って、それからまたバスなの」

 今回の秋田行きは、ほとんど冬海が計画を立ててくれた。あたしは本当に少し調べものをしただけ。乗換があるとか、それくらい。自分で予定を立てて遠出をした事が無いあたしは、冬海から聞いたことをネットで確認したりして。なんだか、大冒険へ出発するみたいに思えた。

「俺、車でしか行ったこと無いんだよ。けっこう移動距離あるよな」

 ま、行ったって言ってもちびっ子の時だけどな。そう言って、おにぎりの最後のひとくちを放り込んだ。

 目的地の入道崎へ到着するのが、おそらく昼過ぎ。半日かかっちゃうね。帰りもきっと遅くなるだろう。

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