月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 バスが秋田県に入っても、天気は良いままだった。2時間半のバスの旅はわりと短く感じて、もう目的地? という感じだ。運転手さんにお礼を言って下りる。背伸びをして頭をぐるり。バスっていう部屋に居たからだろうか。車の音なんかが聞こえ、外に出たなって実感する。深呼吸もする。

 もっとあちこちサービスエリアに寄りたかったな。それが目的じゃないけど。やっぱり免許を取って……。

「晃、駅のお土産屋ちょっと見る?」

 冬海はバスで食べたもののゴミを捨てながら、あたしにそう言った。

「時間あるかな?」

「せっかく来たし、見ていくべ」

 駅に隣接している大きなショッピングビルもあり、休日だったし人出も多かった。自分達が住む町もそうだけど、その土地に来た記念と思い出に、お土産は欠かせない。駅のお土産コーナーにふらりと入った。

「やっぱ、なまはげのグッズ。キーホルダーとかあるよ」

「お土産のキーホルダーって、どうして良いか分からないよな」

「うん、それ思う。お母さんとか絶対お土産にキーホルダーだもん」

「うち、ばーちゃんもそうだった」

 あはは、笑い声を聞いた赤いなまはげキーホルダーは、笑ったように見えた。
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