月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「で、早速なんだけども……」

 あたしは、仮で作ったプリントに修正を入れながら、中尾先輩の話を聞いた。


 本当はさ、変な噂がある中で二人きりでこんな所に居ちゃいけないんだ。

 間もタイミングも悪い。


「……で以上。なんか質問ある?」

「え、いえ。大丈夫……です」


 なんとなく、中尾先輩の話が頭に入ってこない。

 最後にもう一回確認しとこうかな。


「えっと」

「うわのそら。だね」

「え?」

「俺の話、うわのそらで聞いてるでしょ」

「そんな事は……」


 中尾先輩がまっすぐ見てくる。

 あたしは目を逸らした。

 先輩は溜息をついて、ペンを置く。メガネに手をやった。


「……クラスのヤツに言われたよ。2年のあの生徒会のお嬢様、手ぇ付けたのかって。噂出てるぞって」 

「……」

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