月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「やっぱりね、幸田さんも聞いたんだ」


 噂って、回り回っておかしな話になるのが定番。

 生徒会室で逢引きが、3年生の間では「手をつけた」になってる。


「お嬢様って……」

「なんにもしてないのにね。おっかしーよな」


 椅子の背もたれに体を預け、伸びをする。

 中尾先輩は、また少し溜息をついた。



「モヤモヤしたままで勉強なんかできないから言っちゃうけど」



 頭の後ろで組んでいた手を解いて、先輩は再びあたしをまっすぐ見た。



「好きなんだ、幸田さんの事」



 一文字に結んでいたあたしの唇は、少しだけ開いて、そして少しだけ息が漏れた。



 まさかの告白。



「そんなビックリしないでよ、ちょっと傷付く」

「……す、すいま」

「あやまらなくていいよ」


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