月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
「ただいま」

「おかえりー」

 帰宅すると、お母さんの声が出迎えた。

 お父さんはまた出張で数日居ない。

 光はまだ部活だろう。

「もうすぐご飯だよ」

「うん、いい匂い……」


 テレビを見ている後ろ姿。それは妹の光だった。

「あれ、光。帰り早かったね」

「うん」


 スポーツをやってる生徒らしいショートカットの頭は、こちらを振り向かない。

 ジャージ姿だったけど、今日は部活が無かったのかな?


「……どしたの、光」

 あたしはお母さんに小声で話しかけた。

「なんかちょっと元気無いんじゃん?」

 元気な光が、少しだけ沈んでいるように感じた。

「さぁ……。部活のことで悩んでるのかしら」


 そういえば、レギュラーがどうだとか言ってた事があった。争奪で大変なのかな。

 今度、それとなく話を聞いてみようか。



 夕食に並んだ、光の好きな唐揚げを箸でつまみながら、そう思った。



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