月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 高校ってそうだと思う。

 なんか、入学と同時に知らない世界へハイようこそ! みたいな。

 入学直後と学年上がる時、いつも思うんだ。「あたしの名前、ちゃんと名簿にあるの?」って。

 小学校からずっと思っていたんだけど。どっきりだったらどうしようって。名簿にあたしの名前ある?! みたいな。

 マイナス思考。

「でも、あたし2年だし。ちょっと知り合いなだけで何も分かりませんよ? 同じクラスの生徒とかに聞いた方が」

「まだ今の1年と仲良くしてないもーん」

 ……!

 なんだ「もーん」って! イラっとした。


「そう、ですか……」

「他から来た生徒だからな、一応気にかかるわけよ」

「あ、でも誰かと挨拶してるっぽいのは見たことありますよ」

「ふーん、じゃあ大丈夫そうだな」

「たぶん」


 ふんふん、と言いながら、あたしと一緒になってコピー機の動きを見ている。


「秋田かぁ。きりたんぽ」

 野太い声できりたんぽって言われると、美味しそうに聞こえない。

「お父さんの転勤とかですかね」

「いや」

 少し言い淀んでいる気がしたが、おしゃべりついでに言ったらいいじゃん、と思った。



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