月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
あ、コピー終わった。
「じゃあ、あたしこれで」
「ほんとか? 30後半?」
ボヤいている吉永先生を残して一礼をし、あたしはプリントを抱えて職員室を出た。
昼休みがもうすぐ終わる校内。職員室前の廊下には、あまり生徒のざわざわした声は届かない。
次の授業はどこどこの教室だってーとかいう声が遠くから聞こえてきた。
急ぎ足で歩きながら、あたしはさっきナマハゲが言ってた事を思い出す。
秋田から来たんだ、冬海って。
おばあさんと2人暮らし。大変だろうな、知らない土地で。
さっき、両親いないのかもって思ったけど、冬海だけおばあちゃんと暮らしてて両親は居るのかもしれないし。
お母さん、秋田美人なのかなぁ。きっとすごい美人で、冬海はお母さん似なんだろうな。