月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 ショートカットの髪の毛、ぱっちりした目で血色の良い頬。光は姉のあたしから見ても、可愛いと思う。背が高くて、大人になったらそりゃあいい女になりそうな。

 探りながらじゃ伝わらないかって思って、結局はストレートに聞いてみようと切り出した。

「少し暗いなって思って。なんかあった?」

「……」

 なんか、あったんだな。光のその沈黙が物語っている。

「なんもないよ。ちょっと疲れただけ」

「……そう」

 言いたくないなら、今すぐ聞き出す必要は無いのかも。あんまり探って、ケンカになっても厄介だ。

 あたしは、妹の気持ちを分かってやりたいと思っているから。

「……あのさ」

「うん?」

 まだ夕飯の残り香が階段を上ってやってくる。少しだけだけど。その雰囲気の中で、光が言った。

「お姉ちゃんさ、好きな人とかいんの?」

「えー」


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