月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 吉永先生、同じ年齢の男子生徒みたいな事を言う。精神年齢がナントカ……ってやつだね。

「家庭環境とかあっからな」

 ああ、おばあさんと2人暮らし……。

「まぁ、うまくやれや」

「……はぁ」

 通り過ぎながら手をヒラヒラさせる吉永先生の壁みたいな背中を斜めに見て、そしてあたしはまた生徒会室へ歩き出す。

 園沢、冬海……か。

 またその名前が頭をいっぱいにした。

 ああ、今から中尾先輩に会うのに、冬海の名前が。顔が。


 はぁっと溜息まで出てしまう。

 ペタンペタンと、上靴の音が廊下に響いた。

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