月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
独り言を言って、あたしは今度こそ教室へ戻ろうとした。
「センパイ」
「わぁ!」
後ろから肩を掴まれて、あたしは大声を出してしまった。
「うー顔に似合わない驚き方!」
振り返ると、右耳に指を突っ込んで、痛いよーってポーズをする黒髪の男子生徒。
「とうみ……くん」
「センパイが廊下を走って来るの見えたから、ちょっと隠れてみた」
形の良い唇にいたずらな笑みを乗せて、あたしを見ている。
「び、びっくりした」
息は切れるし、びっくりしたし、体に悪い。