見えない糸

「新しい父も、早く私になついて欲しいのか、たくさん話しかけてきました。

学校であったことを聞きたがったり、何して遊ぶのが好きなの?とか。

あまり話したくなかったけど、そうすると、お母さんが悲しむ…

長話にならないよう手短に話をして、すぐに友達と遊びに行ってました。

小学4年生になると、父が家にいる時間が多くなりました。

お母さんに聞くと、父の仕事がなくなったと言っていました。

昼間働いているお母さんと、1日中家にいる父。

そのうち、父が私の部屋に頻繁に入るようになってきました。

カギを付ける事も出来ないし、なにより父が気味悪くて…

お母さんが仕事から帰ってくるまでの間、施設の手伝いをしに行くようになりました。

お母さんには、施設の手伝いがしたいから行ってる、そう理由を言って。

しずちゃん先生には、本当の事を話しました。

本当の父親でもないのに、私にとってはイヤな男が、自分の部屋に入ってくるのが苦痛だったんです。

しずちゃん先生は、私の気持ちを理解してくれました。

お母さんに施設の手伝いの話を言ってくれました。

学校が終わると、まっすぐ施設に行き、お母さんが帰ってくる時間を見計らって家に戻る、そんな毎日だったけど、あの男と2人きりになるくらいなら、こっちの方がずっとマシだと思ってました」



ちょうどその頃、紗織と出会っていたんだな…

元気な女の子だなぁと思っていたけど、まさか、そんな事があったとは…


直次は、その当時を思い出しながら聞いていた。
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