見えない糸

「小学5年生になると、父の気味悪さは更に増していました。

反抗期も重なったのもありますが、とにかく父を遠ざけたかった。

同じテーブルで食事もしたくないし、父がいる場所にいたくない。

もう…本当に大嫌いだったんです。

友達のお父さんとかは普通なのに、どうしてこの人は、こんなにも気持ち悪いんだろう?

お母さんは、この男のどこが気に入ってるんだろう?

本当に不思議でした。

仕事だって探してるのか探してないのか…

私は施設に行ってるから分からないけど、昼間から家にいるか、遊びに行ってたんでしょうね。

とにかく私の中では、あの男は父親として見ていなかったです。

今までは、お母さんが家にいると、父は私の部屋には入ってきませんでした。

それがだんだん、お母さんがいても部屋に入ってくるようになりました。

『なにしてるの?勉強?わからなかったら教えてあげようか?』

あの男が近づいてくるのがイヤで『大丈夫だから!』ってトイレに逃げ込むこともありました。

私が決定的に、あの男を嫌いになった出来事があります。

それは洗濯物です。

あの男は私の下着を持っていこうとしました。

子供の下着ですよ?大人のブラジャーとかじゃないんですよ?

洗濯機の中に入ってて、これから洗おうとしてる下着を…

何してんの?って聞いたら、洗濯機の横に落ちてたからーなんて嘘言って、慌ててそこから出て行ったんです。

年頃の女の子から見たら、もうあの男は父親ではなく変態ですよ!

お母さんに全てを伝えたけど信じてくれませんでした…

当然お母さんは、あの男と別れる事も無いまま、私は小学6年生になりました」

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